先が読めないから戦略は不要?

皆さんは戦略がどの様に立案されていくイメージをお持ちでしょうか?
大企業の経営企画室に所属する高学歴で優秀なスタッフが行うというイメージや、スマートなスーツを着こなした戦略コンサルがフレームワークを活用して論理的に導き出すものだというイメージが戦略にネガティブな印象を持つ理由になってしまっているかも知れません。
高学歴の経営企画スタッフやスマートなスーツを着こなした戦略コンサルは存在しますが、実際の成功例の多くは彼らの手によって作成された戦略とは無縁です。

 

ホンダの米国進出には高度な戦略があった!?

少し古いですが、スマートな外資系コンサルが犯した誤りの事例を一つご紹介しましょう。
日本が誇る二輪車メーカーのホンダは、1959年に世界最大の市場であったアメリカのオートバイ市場に参入し、わずか数年でマーケットシェアNo.1に躍り出ました。
この成長を牽引したのは、今や生産累計台数が世界で1億台を超えている「スーパーカブ」(ご存知ない方は蕎麦屋さんが出前する商業バイクをイメージして下さい)です。
それまでアメリカで高いシェアを占めていたのは、イギリスのバイクメーカーでした。
そこで英国政府はBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)に依頼して、ホンダがアメリカ市場で躍進できた原因を調査させました。
調査の結果を簡単にまとめると、「日本国内での圧倒的な生産量による規模の経済を活かしてコストダウンを達成し、米国の中産階級に小型オートバイを販売するという新しい切り口から米国市場を席巻した」というものでした。

 

当初計画と大きく異なる市場攻略

事実はBCGの分析結果とは全く異なっていました。当初ホンダは中型のバイクで勝負しようとしていました。米国製のハーレー・ダビットソンや英国製のトライアンフなどの大型オートバイが流行している市場で50ccの小型オートバイのニーズがあるとは到底考えてなかったそうです。
日本の実用車であったスーパーカブがたまたま玩具的なモビリティとして注目を集め、スーパーカブを積極的に売る戦略に切り替えました。スパーカブの流通を前提に販路を拡大し、大々的なプロモーションが功を奏して、大ヒットに繋がりました。
BCGが分析した様な「コスト競争力を武器に、競合企業を出し抜く売り方で市場を席巻しよう」なんて戦略が最初からあったわけでは無かったんですね。
※ホンダがアメリカで大躍進するストーリーは、ホンダのホームページに詳しく紹介されています。(https://www.honda.co.jp/supercub-anniv/story/vol3.html)

 

エマージェント戦略

あまり具体的な戦略を決めずにとにかく行動し続けると、行動した事によって状況がどんどん変化していくので、そこに対応していく事を繰り返して大きな結果を生むという考え方を「創発的戦略」と言います。
ホンダのアメリカ市場開拓の例は創発的戦略の典型例だと言えるでしょう。
変化するかも知れない環境予測に時間を使うくらいなら、細かい計画なんて無くても良いから、まずは行動しようという考え方には大賛成です。
しかし、戦略立案そのものが無意味だとは思いません。なぜなら、ホンダが米国市場を攻めようと考えた事自体が戦略だからです。結果としてその通りにはなりませんでしたが、ホンダはホンダなりに米国市場攻略の戦略を持って挑みました。
詳細にまで立てた計画は「絵に描いた餅」になってしまう可能性があります。ですが、戦略という方向性を持たなければ組織はその力を発揮できません。
戦略を立案する際には、計画としての完成度を目指すよりも、社員が納得できる根拠を示す事に注力しましょう。学歴やスタイルは関係ありませんw

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