マネジメントの三面等価の原則
「三面等価の原則」というのはマクロ経済学の考え方で、GDPを生産面から算出しても分配( 所得)面から算出しても支出面から算出しても同じ値になるという意味です。これに倣って「マネジメントの三面等価の原則」という考え方があります。これは組織における各ポジションでは「責任」「権限」「職務(義務)」の値が一致するという意味です。確かに、職務が定まれば、それに責任が伴い、職務遂行のために権限も付与されるという考え方は、理に適っています。

私は三面等価していない!?
しかし、この話をすると「職務と責任ばかり大きくて、権限を与えられていない」と反論される幹部の方が多くいらっしゃいます。例えば「部門長という職務で業績責任は重いのに、経費を使う時にはいちいち上司の決裁が必要で、全然釣り合っていない」という内容です。この認識のズレはどこから生まれるのでしょうか?

権限の過小評価
1つは「権限」の過小評価です。多くの方は「費用の決裁基準」の大きさを「権限」として認識されているようです。「接待を経費として認める」とか「販売促進費」の決裁など、確かにお金に関する権限は分かり易いのかも知れません。しかし、組織における最大の権限は費用の決裁基準ではありません、自身の部下に何の仕事を優先させるかを決められる事なのです。
仮に一人当たりの固定費を年800万円としたら、10人の部下を持つ部門長は年間8,000万円のリソースを何に向けるか意思決定する権限を持っている事になります。「今抱えている業務より、この資料作成を優先させて」とか「既存客よりも新規開拓に多くの時間を割くように」という指示は全て職務に見合った権限に基づいた指示なのです。

責任の過大認識
もう1つは「責任」の過大認識です。例えば、ある部門には部長と部長代理の2人の管理職が居たとして、その上司としては部長にも部長代理にも業績目標の達成や人材の育成という「責任」を二人に対して同じように動機付けしたとします。この時、部長代理の立場にある人は責任だけ部長と同じように与えられているのに、権限は与えられていないと認識するケースが考えられます。これは典型的な責任の過大認識例です。
部長代理に与えられているのは部門長である部長が役割を遂行するのを最大限サポートする職務であり、それに伴った責任です。もちろん、業績目標や人材育成に無責任で良いという意味ではなく、部長がその職務を全うできるよう間接的な責任を負います。強い責任感を持つことは組織人としての美徳とされていますが、自身の責任を勝手に過大認識して権限の少なさを嘆くのは滑稽でしかありません。

ウルトラマンの三面等価
ウルトラマンは怪獣達から地球を守るという役割を与えられ、強い責任感を持って日々怪獣と戦い職務を遂行しています。もちろん、強い怪獣が出てきて苦戦する事もありますが、ウルトラマン自身が3分間しか変身できない事を嘆いたり(権限の過小評価)、本来の役割を超えてCO2によるオゾン層破壊による地球温暖化をどうにかしよう(責任の過大認識)とするのは誤りなのです。

3つの整理して組織を健全に機能させよう
私達が部下を動機付けする時には、「責任」「権限」「職務(義務)」の3つを分かり易く伝える努力をすると共に、もし自らがアンバランスである事で強いストレスを感じるのであれば、再度自身に与えられた「責任」「権限」「職務(義務)」を書き出して3つがバランスしている事を確認しましょう。

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