国の政策実施機関からの依頼で、ある企業の幹部と一緒にSWOT分析をする機会がありました。
ディスカッションを通して、優秀な方でも自社の外部環境変化を適切に把握する事の難しさを改めて認識しました。

1.SWOT分析は使えない!?

実はコンサルティングの現場ではSWOT分析というのはほとんど活用しません。
集めた情報を分かりやすくクライアントに示すためのフォーマットとして使用する事はありますが、環境変化を認識するツールとしてはあまりにも大雑把なのです。
しかも、2×2の美しいマトリックスなので、ヌケ・モレ・ダブりがあっても「それらしく見えてしまう」という弊害があります。
実際にSWOT分析で外部環境をまとめる際には、重要な変化を逃さない様に、PESTや5forceなど、他のフレームワークも活用しながら行います。
実際に行うとわかるのですが、出てくる情報は莫大なボリュームで玉石混交です。たくさんの情報で満たされた外部環境の変化に満足して、思考停止に陥ってしまう事が多いようです。

環境変化には3種類ある

私は、外部環境変化を抑える事で最も重要な事は、変化の「質」を見極める事だとお伝えしています。
1.一時的変化
いわゆるブームと呼ばれるような変化、数ヶ月か長くても数年すれば、忘れ去られてしまう様な変化です。
意図的にブームを狙うマーケティング手法も存在しますが、経営資源が限られる中小企業は、一時的な変化に右往左往しないスタンスが必要です。
2.周期的変化
半導体需要が一定のサイクルで繰り返される「シリコンサイクル」の様に、何年か周期でやって来る需要の変化です。
日本酒やゆったりサイズのファッションなどは、流行と衰退を一定の周期で繰り返しています。
私たちは、この変化をビジネスチャンスとして捉えるか、慎重に判断しなければなりません。
周期的な変化である事を理解して収益向上を目指す事は可能ですが、社運を賭け流ような大型の投資はお勧めできません。
3.不可逆的変化
不便だったものが便利になるという変化は、世の中のニーズを満たす本質的な変化であり、ノスタルジックな思いで古いものが再度脚光を浴びることはあっても、再度不便な状態には戻りません。私はこれらを「不可逆的な変化」と分類しています。
重いものが軽くなる、大きいものが小さくなる、遠かったものが近くなる等、技術革新やイノベーションによって起こる不可逆的な変化にはいち早く対応していく必要があります。

変化への乗り遅れが企業をピンチに陥らせる

小売チャネルにおける「百貨店」の重要性は年々低下していってます。代わりに伸びたのはCVSや郊外のパワーセンター、今ならインターネット販売等の新しいチャネルです。
消費者から見れば当たり前の変化を、百貨店が衰退をはじめた当時の関係者は「今年は冷夏で夏物衣料の売れ行きが今ひとつだった」などともっともらしく説明していました。
本当にそう思っていたのか、あるいは抜本的な対策が立てられないのでそう言わざるを得なかったのかは不明ですが、この言い訳が百貨店業界の進化を遅らせたとも考えられます。
企業は環境適応業です。生き残るのは大きい会社でも強い会社でもなく、不可逆的な環境変化にいち早く対応できた企業だけが生き残るのです。

よろしければフォーローをお願いします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。