悪化は良貨を駆逐する
「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉をどこかで聞いた事がある方も多いと思います。これは「グレシャムの法則」と言われる経済学の法則の一つです。
初めて聞く方のために簡単な説明をすると、金を通貨価値の基準としていた「金本位制」の時代に、金の含有量が少ない金貨(悪貨)が同じ額面のお金として流通し出すと、世の中に金の含有量が多い金貨(良貨)が流通しなくなってしまうという意味です。これは、人間の心理として金の含有量が多い良質なお金は取っておいて、含有量が少ない悪貨から先に使いたがるために起こります。
創造的な仕事ほど先送りされる
ハーバード・サイモンは、組織において「ルーチンがノンルーチンを駆逐する」という状況が起こりうると指摘しました。これを「グレシャムの法則」に倣って「計画のグレシャムの法則」と呼びます。
ルーチンとは、定型業務の事を指します。ノンルーチンは非定型業務、ここでは中長期ビジョンを構築したり、抜本的な改善を行うという様な創造的な業務を表しています。
皆さんも新しく創造的な仕事に取り組もうとした時に限って、日々の業務が忙しくなって、取り組もうとした事がうやむやになってしまった経験があるのではないでしょうか?
仕事を4象限に分類する
さて、では私たちは重要な仕事がルーチン業務に駆逐されないためにどうすれば良いのでしょうか?私たちが抱えている仕事を重要度と緊急度の2軸で4つの象限に分けて考えてみましょう。
4つの象限に分けられた仕事のうち、最も優先されるべきは第1象限であることは言うまでもありません。私たちが日々追われているルーチン業務の多くは第4象限、創造的なノンルーチンの仕事は第2象限に当てはまると考えられます。時間が足りない状況なら、第3象限の仕事はこの際無視しますw
「ルーチンがノンルーチンを駆逐する」状態というのは、重要なノンルーチンの仕事を認識はしていても、緊急性が低いために、今日中や今週中にやるべきルーチン業務に時間が奪われてしまう状況を表しています。
創造的な仕事を先送りしないために
まず検討すべきは第4象限にグルーピングされる業務に多くの時間を割かれないようにする事です。定型業務はやる事がパターン化されているので、RPA【Robotic Process Automation】に代表される自動化や、手作業を極力減らしてデジタル化を図るなど、効率的に業務を行える方法を検討しましょう。
そこで浮いた時間を第2象限に分類される創造的なノンルーチンの仕事に使いたいのですが、緊急性が低いためについつい先延ばしになりがちです。そこで、ノンルーチンがルーチンより弱いのであれば、いっそのことノンルーチン業務をルーチン化する方法を考えましょう。
つまり「やらざるを得ない仕組みづくり」を行うのです。「業務改善の進捗については毎月の会議で進捗を発表する」と約束したり、中長期ビジョン検討のための委員会を立ち上げて打ち合わせ日程を決めてしまう事をお勧めします。