戦略とは、つまるところ資源配分である
どんなに難しい手法を用いて戦略を立てても、その結論は「何にどれだけ人・モノ・金・時間を割くのか」に至ります。戦略とは、限られた経営資源をいかに配分するかを決める根拠なのです。
私は、コンサルタントとして「頑張っているのに儲からない」というクライアントをたくさん見てきました。もし皆さんが同じ様な状況にあるのであれば、「事業ポートフォリオ」で現状を見える化し、より魅力的な事業へ経営資源を割く事をお勧めします。
ポートフォリオと言えば、BCG【Boston Consulting Group】が開発したPPM【Product Portfolio Management】というフレームワークが有名ですが、ここでは中小企業向けに応用した「事業ポートフォリオ分析」のやり方についてご紹介します。
「事業ポートフォリオ分析」とは、複数の事業を行っている場合に、事業別の魅力をダイナミックに把握する方法です(図参照)。

分析の単位について
分析の単位は「事業」です。商品別や営業所別等では分析結果から得られる示唆は乏しいものになります。
「事業」とは「誰に・何を・どの様に提供するか」を言います。3つの内、2つ以上異なれば異なる事業と考えて下さい。
例えば、全く同じ食料品を販売していたとしても、一般消費者向けには商社を通じて小売店ルートで販売しており、飲食店向け業販ルートでは直接販売しているというケースでは「誰に」と「どの様に」が異なるため、別な事業として考えましょう。

丸の大きさについて
売上の規模を表します。売上と丸の面積を正確に比例させる必要はありませんが、事業別の売上構成比がイメージできる程度の差をつけましょう。

成長性について
自社の売上伸長率ではなく、市場の成長性でプロットします。業界団体や調査会社が今後3〜5年の市場成長率を予測していれば、それを用いましょう。市場成長率が把握できなければ、同じ業界の大手企業(複数が望ましい)の売上高成長率を用いても良いです。
各市場の成長率平均値がマイナスでなければ、平均値を中央に置いて上下にプロットして下さい。平均値がマイナスの場合には0を中央に置いてプロットする必要があります。
人間同様、事業には寿命があります。市場は永遠に成長し続けられるものではなく、いずれ成長が鈍化して縮小局面に入ります。これをライフサイクルと言います。現在主力の事業がライフサイクルのどの段階かを見極めて、新しい事業の芽を育てていかなくてはなりません。

収益性について
事業利益率が望ましいですが、多くの中小企業では事業別損益を把握していないケースも多いので、代わりに粗利率を用いる場合もあります。但し事業によって粗利率は実際の利益率と大きく異なる場合があるので、私は「人時生産性」を用いる事をお勧めしています。
粗利率が高くても小口取引が多くて販売工数が掛かかったり、逆に粗利率は低くても少ない手間で大きな売上を上げられる等、事業特性を踏まえて収益性を判断する必要があるからです。
「人時生産性」は、粗利額をその事業に携わる方の総労働時間で割る事で求められます。人件費は多くの企業にとって最も高い固定費ですので、人時生産性の結果は事業利益率の差に限りなく近付きます。
成長性同様に平均値を中央に置いて左右にプロットして下さい。

ポートフォリオ分析から得られる示唆
限りある経営資源は、魅力のある事業に振り向けるべきです。図にある様に、現在最も売上の大きい事業でも低成長・低収益で改善が見込めないのであれば、将来を見越して右上の高成長・高収益事業に経営資源を徐々に移していく必要があります。
中小企業の場合、市場でのシェアは極めて小さい事が多いので、市場成長性は低くても自社の売上向上策は残されている可能性はあります。
但し、低成長の市場で売上を伸ばすのは下りのエスカレーターを逆走する様なもので、かなりの困難を伴います。なるべく早く新しい事業を育てる必要があるでしょう。収益性は自助努力で改善できる可能性がありますが、成長性は自助努力ではどうしようも無いからです。

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